スギナミ・ハイウェイ

 朝4時に目が覚めてなんとなく羽田空港までバイクを走らせた。早朝の東京の道路は空いていて走りやすい。環七、環八がサーキットと化しているのは言うまでもないだろう。60キロちょっとで巡航している僕を追い抜いていくトラックや業務用の車が見えた。ウイングロード。まさに言葉の通り翼を授けてくれる車だ。僕もゴリラだった時、ウイングロードで風になっていたので風になる人間の気持ちはわからなくもない。
 途中、パンを買うために立ち寄った杉並のファミリーマートで完全に酔っ払って出来上がったおっさんと、外国人を目撃した。店の前にはテーブルと椅子が置いてあって缶ビール片手に謎の言語で会話をしていた。あの言語はどこの言葉なのだろうか? すくなくとも英語ではない。謎の言語で会話をするおっさんと外国人の他には酔っ払って死にかけている者たちの姿があった。ビニール袋を握りしめたまま屍と化しているポン中っぽい若者、明らかにカタギではなさそうな服装のおっさん。どこまでもフリーダム。それが朝4時という時間帯なのだろう。
 駐車場の縁石には吐瀉物を吐いたあと寝ている大学生らしき若者とそれを食べているカラスの姿があった。自然界の摂理がある。ソーシャルディスタンスなんて言葉はこの瞬間に存在していない。朝4時のファミリーマートはどこまで自由だった。
 時間にして15分ほど謎の会話をしていたおっさんと外国人はDera ◯◯-sanと言って別れた。なんだお前ら英語使えるじゃん。始めから英語で喋ってくれよと思った。杉並はどこまでも自由だ。