俺たちが地獄だ。

 「だめな人間に惹かれる人間の気持ちがわかない」ネットではなぜかそういう人をよく見る。欠点というのは確かに大きな問題点ではあるのだけど、別の側面から観測すると、時には魅力として見えることがある。そして人はしばしば自分の基準を誤り大地に墜落して死ぬ。ここに男女の性差はない。

 僕を含めて人類は等しく誰しもが馬鹿なので「まだまだ波に乗れる。波を、波を楽しみたいんだ~」と言いながら引き際を失って水底へと引きずり込まれてしまう。ほら、もうすごいサーファーは砂浜にあがって帰り支度をしているというのに……。でも仕方ない。引きずり込まれるか、引きずり込まれないか、その違いは軽い死を経験して戻ってきて反省した経験があるかないかの違いだろう。ここに人間性の真面目さ、人間性のチャラさは関係ない。
 もう一度言うけれど人間はみんな馬鹿なので、自分だけは大丈夫と思っている。俺は俺は死なねー。そう言って僕は株式が文字通りこの世から消滅した経験があるので理解できる。「自分は大丈夫。この人はきっと変わってくれる! だから希望を持つの! 将来のために努力しているって言ってるし!」そう言いながら人類はやっぱり破滅へと向かって突っ走って、ガードレールを貫通して墜落する。自分のことを藤原拓海と思っているのかもしれない。でも、お前は藤原拓海じゃない。池谷先輩なのでそんな技量はない。事故る。努力は口から発せられた言葉ではなく、定量化された数値以外信じてはいけない。
 破滅へと向かって行く人間を止めようとする人々は一定数出てくる。それがどんな関係なのかわからないが、破滅へと向かって行く時、その忠告はものすごく口うるさいものに感じられると思う。そしてロミオとジュリエットみたいなドラマチックな感覚を抱く。でも、その感覚はどこまでいっても感覚なので信じてはいけない。空間識失調に陥った時、唯一信じていいのが計器類であるように。
 人間の気持ちはすぐにバグる。わからん。こいつのこと好きかもしれへん。そう思いながら大部分の人は死なない程度の軽い墜落(死)を経験して次へと進む。

 でも、初手で好きになった人間がゴミだとゴミが基準点になるので基準がバグったままになる。あと、ヤバさ度合いが半端ないと口うるさい忠告をしてくれる人すらいなくなる。なぜなら忠告すると死ぬから。
 そして破滅へと向かって誰かのために頑張っている人間というのは、よくわからないけれど妙な魅力があったりする。この女最高かもしれない。寝てしまおう……。感情に任せて行動して寝ると君が起きた時、ホテルの一室にはガラの悪い男と騙した女がいて「金払えや」と言ってくる。ちゅらい。ついさっきまではあんなに輝いて見えた女が土偶に見える。ハニワ幻人を全滅させてえ。強くそう思うに違いない。だけど、君に強いお友達がいない場合、高い勉強料を払う羽目になる。こんなんだったらソープに行けばよかった。そう思っても過去は変えられないので、殴られないようにするためにはお金を払うしかない。そしてお金を払うともれなく地獄への青春18切符が手に入る。この青春18切符は特急も特別も乗り放題なのであっという間に人は破滅へと向かっていく。誰かを道連れにしながら。でも、どうにもならないんだ。地獄へと向かっている実感はあっても、進む場所がそこしかないのだから。オルフェンズの鉄華団のように。まっすぐ進むしかない。止まるんじゃねえぞ……。
 そして住む世界がハッピーセットな人類がそうしたオルガ(人)を見た時「あの人、ものすごく頑張ってる。自分に真摯ですごい!」みたいな確変が入ることがあったりする。ここは理屈ではなくてセキュリティホールを突いた一種のバグなので、バグを客観視できる環境があるか、それともないか。判定基準はそんなところだ。

 見る世界が異なっていて、それが衝撃的な出会いだと、人間の気持ちは幾らでも確変が入る。そしてバグった気持ちのまま飛行すると墜落して死ぬ。そこが場末か、それともカーストのテッペンかは関係ない。僕はみんな等しく地獄へと落ちる可能性がある。